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  • 【311の記憶:7:反転攻勢:加筆修正し再掲】

    2015/03/25

    fewwewfew

    3月16日。
    自衛隊ヘリによる福島原発3号機、4号機燃料プールへの注水、決行。
    皆、祈るような気持ち。
    一滴でも燃料プールの水量を増やし、時間稼ぎをしたい。
    合わせて、国民と米国に向けて前進する姿勢を示したい。

    自衛隊のヘリには特殊な金属を床に敷き、
    放射線被爆を最小限にする工夫。
    それでも自衛隊員が普段以上の大量被爆になることは確実。
    そして、空中放水による水蒸気爆発の危険性が拭いきれない。
    自衛隊の生命と、東日本全体が危険にさらされる。
    防衛省や危機管理センターでは
    自衛隊機から報告がダイレクトに届くだろうが、
    テレビでも生中継が行われていたので秘書官室で見守ることに。
    総理には、作戦の決行が防衛省から告げられる。
    総理も同じように執務室で作戦の成功を祈る。
    NHKの望遠レンズで捉えられたヘリは、かなりぼやけている。
    それでも、基地を出発し福島原発に向かう姿は頼もしかった。
    かたずを飲んで見つめる。
    秘書官室全員が立ちながらテレビを見つめ、
    そのままの姿で電話応答なのど業務をこなしていた。

    しばらくすると、
    福島原発近辺に到着。
    海で海水をすくい、いよいよ燃料プールへ。
    しかし、放水が始まらない。
    ぼやけた画面ではあるが、それでも放水が実行された気配がない。
    室内に不穏な空気が漂った頃、担当秘書官の電話が鳴る。
    秘書官が「作戦中止」と呟く。
    想定より放射線量が遥かに高かった為。
    全員、うな垂れた。
    ようやく見えた前進が遠のいたようだった。
    「すみません。。。」
    防衛省出身の秘書官が一番落ち込んでいた。
    他の秘書官らと皆でねぎらう。

    作戦中止の詳細が総理に報告され、翌日、再実行と決定。
    決行時間は、既に予定されているオバマ大統領との電話会談の直前。
    オバマ大統領が懸念している2点、
    ・燃料プールの水位改善、
    ・日本政府の必死の覚悟、
    この二つを背負った決死の作業は、自衛隊の一機のヘリに託された。
    自衛隊の実行如何が、様々なものを左右する状況となる。

    17日朝。
    早朝より緊張が高まる。
    秘書官室では前日と同じように、皆総立ちでテレビを見つめる。
    「頼むぞ!!!」そんな声が漏れていた。
    前日と同じように基地を出発。
    海で海水をすくい、燃料プールへ。
    昨日の実行部隊の報告によると、
    現場の線量は相当高く、隊員の健康が気にかかる。
    ただ、それ以上に、もう後がない環境だということも、
    官邸で画面を見つめる人間の総意だった。

    ヘリが燃料プール付近に到着。
    昨日と同じ光景。
    なんとか放水を実行してほしい。
    固唾を飲んで見守る中、ヘリがいよいよ燃料プール上空へ。
    そして、次の瞬間、
    望遠レンズで捉えられた、ぼやけたヘリから水が落下。
    「よし!!!」
    3号機、4号機の頭上を通過しながら、水が放水された。
    これでどれぐらい燃料プールの水位を上昇させたかは判断出来ない。
    それでも、物事が前進して行く大きな一歩に感じた。
    暴走する原発比べれば遥かにひ弱い人間が、
    決死の覚悟でようやく一矢報いた瞬間。

    「やったなぁ!!」と秘書官室で歓声。
    「良かった。。」と安堵する防衛省出身の秘書官。
    秘書官室内にある、リアルタイムで株価を示すボードをみると、
    株価が急激に上昇していった。
    偶然か必然か、自衛隊の決死の行動直後に株価が上昇している。
    「とうとう自衛隊は株価まで影響を与えるようになったな」。
    そんな冗談がもれるほど、秘書官室は一時の喜びに浸る。

    その後直ちに、
    外務大臣や北米局長が総理執務室へ。
    早速オバマ大統領との電話会談が始まる。
    私は秘書官室で待機。
    会談終了、外務省出身の秘書官が執務室から出てきた。
    秘書官は笑顔。会談は良好との報告。
    大きな懸念は払拭されたようだ。
    一同安堵。

    翌18日。
    震災以降、ひたすら買い続けられた「円」。
    一時、1ドル70円台の超円高となっていた。
    大震災に見舞われた日本に対し、投機的な動きがあることが原因。
    人の命がどうであれ、金儲けは続いている現実に悲しくなる。
    だが、この日は潮目が変わる。
    朝から官邸内も慌ただしい。
    以前から極秘裏に調整していたG7による協調為替介入を実行する日。

    予定通り、協調為替介入開始。
    介入直後から、猛烈な円安に反転。
    「よし!」財務省出身の秘書官が声を上げる。
    つられて私も
    「行け!行けぇ!!」
    秘書官室でインジケータを皆で見つめて叫ぶ。
    その日、円は70円台から一気に80円台に戻した。

    原発の注水作業は続く。
    自衛隊のみならず、東京消防庁まで参加して必死の注水を試みる。
    テレビでは東京消防庁の勇姿ばかりが放映されていたが、
    警察も悪戦苦闘の中、相当の努力をしてくれていた。
    過激デモを鎮圧する用?の放水車まで投入しての懸命の作業。
    もともとこの放水車は頭上ではなく、前面への放水を目的としているので、
    効果の程は疑問視されていたが、総理の強い意向で投入。
    案の定、高さが足りず、
    3号機、4号機への注水は出来なかった。
    その失敗報告を総理にした際、
    警察出身の秘書官が強い口調で咎められた。
    もともと不向きと伝えていたのにもかかわらず、
    総理の強い意向で実行されたのだが。
    報告を終え、
    総理執務室から退出した際に皆で警察出身の秘書官を慰める。
    「総理ご自身が無駄骨承知って言ってたのになぁ!」。
    いずれ、政府の持ちうるもの全てをかけて、震災と向き合っていた。
    それは、各省出身の秘書官らの奮闘にも現れていた。
    東電との統合本部の設置、
    自衛隊の放水、
    オバマ大統領との会談、
    G7による協調為替介入
    各省管轄のありとあらゆるものによる放水作業。
    数日間のこれらの出来事を経て、
    ようやく一方的な守勢から、攻勢に転換。
    原発の具体的な対応は、
    15日に設置した東電との統合本部に任せている。
    官邸側は細野補佐官らから報告を聞き、必要な指示をだす。
    情報共有も連携も大きく前進した。
    東電に設置された統合本部が中心となって事故対応にあたるので、
    官邸にいる私は、この時期を機に原発事故対応から一線をひいた。

    続く(次で最終回になります)

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