202103月22日

【自分ごととして〜性犯罪被害について〜】

子を持つ親にとって、これほど過酷な選択はないのではないか。
愛する娘さんが性犯罪被害にあい、その犯罪を取り調べる警察から突きつけられた選択は、余りに酷なものでした。

相談者より、国会でもちゃんと議論してほしいと願いも受け、今回法務委員会で取り上げました。

お店で不審な行動をとっていた男性が通報されて、警察がその男性の携帯電話の中身を確認したところ、児童ポルノの写真が山ほど出てきました。本人はその犯行を認めて、どの子どもを撮ったかという事実を警察に全て話した為、学校経由で相談者に連絡がきました。
娘さんの写真や動画がある、と。
そして、その加害者とは、信じがたいことですが、娘さんが仲が良かった友だちの父親でした。

娘さん同士仲が良く、何度も友人宅に泊まりに行っていたそうで、加害者である友人父親は、被害児童が寝ている間に衣服を脱がせて、写真を撮り、プライベートゾーンを触わり、そしてまた加害者自身の性器を勃起させたものを触らせて写真や動画を撮ったということでした。

その後、警察から被害児童の親に連絡がきたものの、そこで警察側から発せられた言葉はおよそ信じ難いものでした。
「娘さんに聴取をさせなければ、被害届は受け付けない」。

親にすれば、愛する娘が本当に許せない犯行に遭い、それだけでも耐え難いことではありますが、せめて加害者にはしっかりと裁きにあってほしいと願うのに、警察側が提示した条件は、そのようなことをされたことに気づいていない娘さんに対して、聴取をすることが被害届受理の条件だと迫るものでした。その上、2度目の保護者聴取の際は「娘を傷つけたくないので、被害届は出しません」と予め書かれた調書を警察側が用意して待っていたと。担当者は「これが、俺のやり方だから」と言い放ったそうです。

聴取によって、娘さんが自らの身に起きたことに感づいてしまい、改めて傷つけてしまうのではないか、と、示談に応じることも考えたと思います。実際、加害者側の弁護士からは再三に渡る示談の提案があるとのこと。ただ、相談者は強く悩みます。「示談に応じれば、その加害者は前科も付くこともなく、また野に放たれてしまう。再犯の確率は低くない。そして、同じような子供の被害者が生まれてしまうのではないか。そうしたらその子に申し訳ない。あの時、自分が頑張らなかったから、よその子がさらに被害にあったなどということになったら自分たちの責任だ」と。

被害者の親に、なんという選択を国は迫っているのだろうか。

「犯行が行われている時に、起きていたかどうかを確認したいのでは」と、元検察官からの指摘もありました。
それによって、量刑の幅が変化するだろうと。

でも、被害児童は、13歳未満、性同意年齢に満たない年齢です。
従って、起きていようが起きていまいが、本人が同意しようが同意しまいが、強制わいせつの罪は確定的で、量刑の幅は当時の様子で変化しうるでしょうが、その量刑の的確性を定める行為と天秤にかけられているのは、子どもの心の傷です。

性犯罪に詳しい方に聞けば、同類の事案は珍しくないとのこと。
この、悶絶する選択を国の司法制度、行政が国民に迫っている実態を知り、国会質疑を通し徹底的に警察庁の姿勢を質しました。

質疑の後、警察庁から所管の警察署、担当への指導がなされ、被害届が聴取なしで受理されることになりました。
元来、警察は虚偽などを除き、被害届は即時受理することとされており、ようやく本来あるべき運用がなされただけではあります。
それでも、その本来のあり方が徹底されず、結果的に保護者や被害者が二次被害にあっている可能性は、この限りではないと思いました。

長年、性犯罪被害について取り組んできた上川法務大臣は以前このようなことを話していました。
「加害者と被害者という区分けがあり、そのどちらにも関わらない方々は、自分の問題として考えにくい。
だからこそ、この問題に取り組むには、如何に「自分ごと化」出来るかが重要だ」と。

今回、相談を受けながら我が身に重ね、その過酷な選択を迫られたとと、その理不尽さに身震いがしました。
上川大臣が言う、「自分ごと」の意味がよく分かった瞬間でした。

質疑を通し、警察の取調べのあり方を正し、今後迎える性犯罪に関する刑法改正に関しても問いました。
加えて、今回の件を受け、自ら強く働きかけ、党内に性犯罪対策に関するワーキングチームを立ち上げ、その座長に就くことになりました。

性犯罪は、女性だけの問題ではなく、加害者のほぼ全てが男性であるということから、男性の問題だと考えています。
そして、子どもを性犯罪から守るのも、子育て世代の私たちみんなの責任です。

自分ごととなったいま、
子を持つ父親として、徹底的に取り組みたいと思います。

 

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