202106月14日

【子どもを性被害から守るために】

「中学生以下を性被害から保護するために、成人は、いかなる理由をもっても中学生以下を性行為の対象にしてはならない」
いわゆる性交同意年齢の引上げが正式に了承され、党の方針となりました。

現在、性犯罪に関する刑法改正に向けて、法務省で検討が進められています。
法務省検討会の報告書では、多くの論点が両論併記となっているなか、意見が分かれる論点であるならば、それらの意見を集約することこそが政治の役割であるとの考えから、党の「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム」が設置されました。私は座長として精力的に議論を続け、性交同意年齢の引上げについて党の方針がまとまりました。

議論の中では、子ども、その中でも特に女子中学生に性被害が発生していること、その性被害が現行法では捕捉しきれていないこと、従って、何らかの対策が必要であることが認識として共有されました。

現行法体系は、刑法では13歳未満の小学生までしか保護しておらず、児童福祉法や各都道府県条例等で成人と未成年の性行為を原則処罰しています。しかし、真摯な恋愛に基づく性行為は、その処罰対象から除かれています。つまり、現行法体系が示す価値観は「中学生であっても、性行為に関して真の同意ができうる」という前提にたっています。その現行法のあり方を維持するのか、それとも変えていくのかが問われました。

誰を保護し、誰の視点に立って考えるか、それが問われた議論における私の考えは以下の通りです。

<中学生の脆弱性>
中学生は、いまだ義務教育の過程にあり、意思決定や判断の能力はなお脆弱と言える。妊娠リスクや性感染症リスクなど性行為についての知識も十分ではなく、性行為の対象となった中学生は無防備なまま妊娠リスクや性感染症リスクに晒されることになります。
妊娠すれば医療的にハイリスク妊婦となり、社会的にも学業の継続は困難となり経済的困難に陥りやすくなります。このような状況で、中学生が妊娠する可能性のある行為を国として容認するのかが問われています。
また、成人から性行為の対象とされた中学生が受ける精神的悪影響は計り知れません。自尊心の低下や摂食障害、自殺など将来に深刻な影響を与えます。中学生で性的行為の対象とされ、大人になってからも苦しんでいる被害者がいることは報道等で明らかです。

<失われた対等性>
成人と中学生との間には、同年代同士や、成人同士とは比べものにならないほどの、大きな力の差が存在します。成人側は、そもそもとして人生経験を長く積み、働くことが許され、経済的な自由や移動の自由も十分に確保されています。一方、中学生側は、いまだ義務教育の過程にあり、親の監護下で働く自由もなければ、経済的な自由もありません。性行為においては、女子中学生であれば、自らが避妊具を購入することもできず、その結果として妊娠による身体的精神的負担を一身に中学生に背負わせることになることに他ならないのです。圧倒的な、立場と環境の差がある非対等の関係においては、たとえ本人たちが「恋愛関係だ」「同意がある」と思っていたとしても、(相手に対する気持ちまでは内心の問題ゆえに是非はないが)客観的に見れば、いざ性行為に及べば、それは力関係の差を利用した性虐待、性的搾取と捉えられうることは否めません。
真摯な恋愛関係の中、年齢が近い成人ならば中学生との性行為も許されるのではないかとの意見がありました。しかし、成人側の年齢は関係ないと考えます。そもそも、成人と中学生という非対等な関係の中で、未成熟な中学生に性行為に関する真の同意が行えると考えるのは、成人側の勝手な思い込みだからです。

<恋愛関係の中に潜む性搾取>
「お金が欲しかったのではない。大事にされたかっただけ」。そのように言葉を漏らした女子中学生がいるように、中学生の段階で成人男性と恋愛関係となり、性搾取の標的となる被害者は少なくありません。しかし、その「恋愛関係」という特殊な関係ゆえに、中学生の家庭環境などに付け込まれ自らが被害にあっていることを自覚しない場合も多く、後になって深い傷を負うケースが後を絶ちません。まさに、被害の最中には被害の自覚が伴いにくいことが、根本的に性被害を減少させることができない大きな要因です。

<男性本位の発想>
恋愛関係ならば性行為をしたいはずと考えるのも、完全に男性本位の発想です。なぜなら、女性にとって性行為の先には妊娠の可能性があるからです。性交をすれば、中学生であっても妊娠の可能性があり、そのことは大きな心身の負担になります。義務教育下で、働く自由も、経済的な余裕も、移住の自由もない中で、そして性に関する十分な知識も備わっていない中で、成人が中学生に妊娠という大きな負担を負わせることを例外的にでも認める理由はあるのでしょうか。あるとすれば、それは余りにも男性本位の発想と考えます。

以上のような考え方を基に、中学生を性被害から保護し、守ることを何よりも優先すべきとの認識が共有され、いわゆる性交同意年齢を引上げることで、
「中学生以下を性被害から保護するために、成人は、いかなる理由をもっても中学生以下を性行為の対象にしてはならない」
とする党の方針がまとまりました。

以前から、性暴力被害があるにもかかわらず、性犯罪として捕捉されていない現状に対する不正義を訴える声が多く上がっています。被害の実態にできる限り沿う法改正を重ねることが、性暴力被害に苦しむ方を救い、性暴力自体の減少にも繋がると考えています。
そのために、いわゆる性交同意年齢の引上げにとどまらず、今後も性犯罪に関する刑法改正の検討をかさねて参ります。

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