202110月03日

【地道な仕事】

【地道な仕事】
議員にとって必要な要素の一つに「しつこさ」があると思います。
何に対するしつこさかによって評価は変わると思いますが、今回はしつこさが一つの成果となったことについて。
 
この度、文部科学省から一つのデータが開示されました。
仰々しいものでもなく、とても地味なものです。
 
 
どこにでもあって、いつでも開示されていそうなデータですが、
私が知る限りにおいて、文科省として初めて開示されたものです。
そして、このデータを開示することについて、文科省はとても後ろ向きでした。
 
発端は、2018年の医学部(医学科)受験不正。
女子受験生というだけで、男子受験生に比べて不利な採点をされていた事件です。
事件発覚を受け、医学部医学科を持つ全大学への入試調査が文科省主導のもと行われました。
その結果、医学部受験生の合格率は、国公立、私立を問わず、数多くの大学で明らかに男子受験生の割合が高くなっていたのでした。
 
当時は相当な問題となり、日本に根付く女性差別の最も醜悪な事件として多くのメディアが取り上げました。
不正を自ら認める大学もあれば、いつまでも不正を認めない大学もあり、この問題の病巣は根深く、改善が急務と叫ばれたものです。
しかし、時が経つにつれて話題は陰り、報道も途絶し、連動して国会で取り上げる議員もいなくなりました。
すると、静かに大学側の抵抗が始まります。
 
事件発覚当時は、医学部をもつ全大学が文科省の調査に応じ合格率の男女比を公開しました。
しかし、関心が薄まったとみるや、翌年から合格率の男女比を非公表にする大学が増えていったのです。
事件発覚当時は強い態度であった文科省も、「公開させる権限がない」「大学側の自発的な公表を待つ」などと一転消極姿勢に。
文科省の医学教育課では、医学部医学科を持つ全大学の受験者数から合格者数、入学者数に至るまで詳細な調査を長年行いながら、なぜか男女別の合格率だけは調査対象から外し続ける不誠実さ。
 
そこで昨年、数え切れないほどの文科省との折衝と、3度に渡る国会質疑を経て、大臣答弁を積み重ね、毎年行なっている文科省の調査に「男女別の合格率」を項目として追加するという運びとなりました。
 
あれほど嫌がっていた文科省と、大学側が本当に公開するのだろうか。
一抹の不安はありましたが、大臣が答弁の約束を守ってくださり、晴れて今回の公表となりました。
 
公表内容を見るに、多くの大学で歪な男女比はかなり改善されているようにも思えますが、昨年単年だけで判断するには難しいものがあります。
それでも、平成25年度から令和2年度までの8年間、連続して男性の合格率が女性の合格率を上回っていた大学のいくつかで、今年度初めて女性の合格率が上回った大学もありました。
この、情報公開を半ば義務化したことが、どれぐらいの効果を及ぼしたのかはわかりません。
それでも、情報公開されることが常態化することは、不正をただし、再発の防止に役立つことは事実と思います。
 
 
私がこのことに本気になって取り組むきっかけは、国際結婚しているある夫婦の言葉です。
「娘が二人いるが、女性というだけで減点されるこの日本のことを、10歳になった長女に合理的に説明できない」。
その言葉を残し、実家のあるオーストラリアに家族で移住してしまいました。
今回の件で、少なくともその彼女に「日本は改善に向かっているよ」と、声をかけることが出来そうです。
 
とても地味な成果ではありますが、国会に身を置くものとして、一ついい仕事ができたと思います。
影響を受ける方はさほど多くないとしても、基本的人権に関わる重大事であるからです。
議員である以上、選挙を控えどうしても目立った仕事に取り組みたくなるものですが、
これからも、例え話題性が乏しいものであっても、しつこく取り組んで参ります。

 

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