202201月27日

【医学部入試女性差別問題のその後】

先週から国会が始まり、国対の一員として文字通り息をつく間もありませんが、本日の日経新聞2面に嬉しい報道があったのでこちらでご報告を。

昨年、一昨年の国会で、医学部入試女性差別をなんども取り上げ追及してきましたが、2021年度の医学部入試で、過去9年間で初めて女子受験生の合格率が男子受験生を上回ったことが書かれていました。

2018年、複数の医学部で、長年にわたり試験の点数を操作するなどして、女子受験生や浪人生に不利になる取り扱いをしていたことが明るみとなりました。

発覚当時、文科省は調査に乗り出し、医学部を持つ全ての大学の「男女別の合格率」を開示させました。男子受験生の合格率が女子受験生の合格率より明らかに高い大学が多くあり、その中の幾つかの大学は、自ら女子受験生を減点するなど不正な採点をしていたと申告し、処分を受けました。

しかし、その後文科省の姿勢は「大学の自発的な公表を期待する」と大きくトーンダウン。

今後の不正を監視するために、文科省が毎年調査・公表をすべきだと、委員会質疑や個別のヒアリングで何度も求めましたが、「開示させる法的根拠がない」「権限がない」などとして、あくまでも大学にお願いする立場との姿勢を崩しませんでした。

なかなか決め手がなく難航していたとき、不正入試を担当している課の隣の医学教育課で、10年以上前から、医学部医学科全大学の、受験者数から合格者数、入学者数に至るまで詳細な調査を行なっていたことが、私の事務所の調査でわかりました。ならばその調査を男女別に集計すればいい話ではないかと迫り、ようやく毎年行なっている文科省の調査に「男女別の合格率」を項目として追加し公表する、という方針が示されました。

2021年度の入試シーズン前のことでした。

そして、本日報道された通り、昨年9月公表された2021年度入試のデータでは、合格率(受験者総数に占める合格者総数の割合)は男子13.51%、女子13.60%と逆転。女子受験生の合格率が男子受験生より低い大学の割合は、前年度の67%から44%に激減していました。

男女別の合格率を見える化したことが、より公平な入試の実現を後押ししたのだと思います。

この問題に取り組んでいると、「医者の世界は大変で、産休や育休、結婚で現場からいなくなる女性よりも、男性が必要なのだ」という声を幾度となく聞きました。実際に病院で働いている女性医師からも同様の意見を聞き、その過酷さを痛感しました。

しかし、だからといって入試で女子受験生の点数を不正に操作し、医師になる男女の数を調整し過酷な現場に対処するための解とすることは正しくありません。

日経新聞が朝刊2面で大きく取り上げていることがその証左ですが、男女平等の実現は、経済にとっても大きな良い影響があることは世界の常識となっています。妊娠出産といったライフイベントがなく、結婚後も家事育児を人任せにして仕事に専念できる人たちだけが医師として重宝されるそのあり方自体が、女性に関する医療を軽視する原因の一つにもなってきたとの指摘もあり、女性医師が少ない現状は、さまざまなところで日本の社会のありかたを歪めています。

女性医師を減らしてやり過ごすのではなく、その過酷な現状を変え、男女ともに持続可能な働き方ができる医療現場にすることにもっと知恵を絞るべきではないでしょうか。

そしてその変革は、現場に女性医師が増えることで加速すると私は信じています。

日本社会を見渡せば、医師だけでなく、なぜか女性が少ない現場がたくさんあります(その際たるものが国会ですが・・・)。

障害となっているものを一つ一つを取り除き、見えない壁で誰かの可能性が奪われることのないよう、これからも努力したい。

それが男女ともに生きやすい社会だと私は信じています。

 

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